第10章 蜜の味は苦い
何とか資金に余裕が出てくると又別の意味での金銭問題が発生するもので、そのいくつかを恥を忍んでお話しします。
高額のオーディオ製品を頻繁に購入されるお客様がおり常に支払いも律儀で月末には必ず入金される方でしたが、突然数か月しても数百万円の入金がありません。
意を決して催促の電話をしたところ既に支払い済みとのこと。調べたところ社員が預かったお金を懐に入れていた事が判明。返済を約束する念書を作成して解雇としましたが、いまだに1円も返済はありません。領収書の確認等を怠った私の脇の甘さが露呈しまました。
次に私が入社時期にお世話になった会社近くの建設関係の社長さんがいました。
豪傑で話が面白い方で手広く事業を展開しており、よくご飯に連れて行ってくれました。
ある日電話があり、友人を助ける為5日ほど数百万貸してほしいとのこと。
お世話になった義理があり、社長本人の会社は順調に思えたので、数日であれば力になりたいと考え融通しました。安心の為にと5日後の日付で同額の手形を渡されましたが、結局期日までに入金は無く不渡りとなりました。その後の行方は分からず仕舞です。
最後に医療機器の販売で手広く事業をしている会社オーナーから仕事の依頼がありました。
当時桁違いの映像製作費に有頂天で引き受け無事完了となりました。
撮影の合間にはオーナーより差し入れで手作りのはちみつの瓶詰めを頂きました。
数か月後某弁護士事務所より医療機器会社の破産申請の書類が届きました。
倒産寸前に膨大な額の広告を出稿にて、当たれば会社復活、駄目なら支払いをせず倒産とする俗に言う「イタチの最後っ屁」でした。
最近世界的なスーパースターの大谷翔平のニュースが連日メディアを賑わせています。
ご存じの通り信頼していた通訳が大谷選手の口座から無断で24.5億円もの大金を不正送金していた問題です。マスコミは不正送金の手口やその後の捜査に焦点を置いたコメントに留意していますが、私の視点は大谷選手の人柄に興味を持ってしまします。
無論自分と比べることは憚れるほどの存在である事を承知の上で言えば、人は目標に向かって直向に努力を惜しまず続ければ夢は実現する。人は誠実に対応すれば相手は必ず相応に返してくれる。つまり性善説が根底にあるように思えてなりません。
社員、友人、顧客それぞれから裏切られた事は、今でも許しがたいですが、仏教の因と縁の法則で言えばその原因を作ってしまった私自身にも責任があると今では思っています。
その時オーナーより差し入れでいただいた蜂蜜の味はとても苦い物でした。
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